Formaula SAEとは?

 FSAEはアメリカミシガン州郊外のポンティアック市にて行われる自動車技術を通じ、
学生に仮想企業を運営させて実践的な知識を身に付けさせることを目的とした
アメリカ自動車技術協会(Society of Automotive Engineers)の主催で行われる自動車競技会です。
また、世界97カ国に約8万人の会員を持つ自動車・航空宇宙分野に関する学会の学生教育部門が開催する
教育イベントのひとつでもあります。

 FSAEの規定は、A4版用紙で70ページにも及ぶものだが、簡潔に言うと次のようなものとなっています。
  ●量産を前提としたアマチュアレーサー向けのレーシングカーを、コスト2万5000ドル以下で開発、制作すること。
  ●エンジンは、排気量610以下の4ストロークピストンエンジンとし、過給は自由。
  ●車両製作などからドライバーまですべては学生が行い、指導教員はアドバイスはしてもよいが、手を貸してはならない。

 競技内容は、車両のデザインを競うスタティックイベントと、車両の走行性能を競うダイナミックイベントに分かれていて、
総合で最高得点を取ったものが優勝となります。
レギュレーションでは安全規定には厳しいものの、あえてそのほかの規定は緩やかにすることで、
学生が自由な技術的発想を試すことができるようにしている。

 そのため、フレームはスチールパイプのスペースフレームから、カーボンコンポジット製モノコックまでなんでもあり、
エンジンも600のオートバイ用が主流ですが、それにターボやスーパーチャージャーなどを搭載したものもあり、
なかにはスロットル開度に応じて3段階で作動する電動式スーパーチャージャーを採用するところもあります。

 また、吸排気系は自作するルールとなっており、そこでもコンピュータによる音響解析に基づいたチューニング技術や、
電子制御インジェクション化、ドライブ・バイ・ワイヤー制御なども多く見られます。
このほか、CFD(数値流体力学)に基づくグラウンドエフェクトボディーなどもあり、
同じレギュレーションから生まれたマシンとは思えないほどのバリエーションを見せています。
さらには、アルミホイールや610?のV8エンジンの自作など、とんでもないことをやってくれる学生たちもいるほどです。

 しかし、先に述べたように開発コストが制限されているために、
あるチームが資金力にモノを言わせて勝つことはできないようにもなっています。
このコストに関しては、作業時間、作業内容ひとつひとつまでレギュレーションで単価が決められており、
この管理と製造工程の管理力がコスト分析として審査されます。

 これは、よい製品を適正な価格で生み出すという技術者の使命を実体験させるものであるからです。
また、現在の技術者は、生み出した製品の優秀性を社内、社外でアピールする力が求められるため、
技術開発も競技種目のなかに含まれています。

 こうして、学生たちは自動車メーカーの開発チームと同様の仕事を学生時代に経験できてしまうのです。
しかも、イベント参戦に向けた動きでは、マシンの熟成、スポンサーの獲得交渉などプロのレーシングチームなみの経験をつむこともでき、
契約書の作成、スポンサー交渉、リリース作成などにはビジネススクール、文学部、芸術学部の学生も、
実務体験できるようになっているのです。
また、こうした活動のなかではプロジェクトに大切なチームワークも学べる事も忘れてはいけません。

 この結果、FSAEはアメリカの自動車業界と産業界で、優秀な人材の宝庫として大いに注目されるようになりました。
実際、アメリカの大会は、GM,フォード、ダイムラークライスラーにより運営支援共同体が組織されており、
大会会場には3社の人事部による大きなテントが設けられています。なかでも、フォードは参加学生の優秀さから、
就職指定校制度を見直すこととなったようです。
また、数年前のアメリカ大会にはF-1Teamのウィリアムズのパトリック・ヘッドも見に来ていたほどです。

 イギリス大会でも、コスワースが求人ブースを設けたほか、アロウズは大会審査委員に技術スタッフを派遣し、
ジョーダンは有力校への技術支援と金銭支援を行うことで、優秀な人材を見つけようとしている様子。
こうした人材を求める企業やチーム側は、FSAEの卒業生を高度な知識と技量をもった即戦力と見なしており、
それは、トラブルによるリタイヤを避けるために常に完璧な研究と作業が求められる経験をしているうえ、
机上の理論だけでなく、実際に頭を使って手を動かした体験は、
エンジニアとして何物にも変えられない貴重な実戦経験を積んでいることだというのです。
実際、卒業生はアメリカ自動車産業界を復活させた原動力となったばかりでなく、
コスワースのCART担当エンジニア、ジャガー・レーシングのソフトウエアエンジニア、
キャデラックのル・マンカー開発チームのシャシーデザイン担当、
GMのNHRA担当エンジニアなどトップカテゴリーで活躍するエンジニアばかりなのです。

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